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ミートザおやつ 〜子供達とお菓子造り〜

ミートザおやつ ~こどもお菓子教室~

昨年夏の家族のアトリエ(こども料理教室)に続いて、ミートザおやつ(こどもお菓子教室)の講師を当店のパティシエール、延命寺が務めてまいりました。これは渋谷区開催のイベントの一つで、夏のお料理教室をお受けしてからのご縁です。

代官山の駅からほど近い施設には小学生から高校生までの子供たちが、放課後を思い思いに過ごしています。今回の会は、“一緒におやつを作って一緒に食べよう”というコンセプトのもとに開かれています。

12月のクリスマス前ということもあり、リクエストされたのはブッシュドノエル。一人一台のブシェットを、事前に用意したパーツと一緒に作ったパーツを使って組み立ててもらいました。カスタードクリームってこうやって作るの?生クリームってシャバシャバな状態からふわふわのクリームになるの?と小さな子供たちは興味津々。お菓子作りが好きだという中高生の参加者たちは、プロの手さばきを目の前で見られてとても刺激を受けたようでした。試食を始める頃にはお迎えの保護者の方も数名見えて、自分が作ったブシェットを嬉しそうに見せたり食べてもらったりしている子供たちのキラキラな笑顔に、初心に帰らされた気持ちでした。。

物質的にはとても恵まれて豊かな国の一つだと言われている僕たちの国日本が抱える食料問題は多く、第一次産業の後継者不足、ほぼ輸入に頼る食料、森林開発や伐採による自然環境破壊問題とそれに伴って起こる鳥獣害、乱獲や海洋汚染による漁獲量の減少、フードロス、外食産業の人手不足など数えあげたらきりがありません。未来を生きるかわいい子供たちに、負の遺産を残すわけにはいきません。食に携わる僕たちが一人でも多く少しでも早く取り組まなければならないと感じています。

当店のスペシャリテは野生動物の肉料理ですが、ジビエという言葉が一般に浸透し始めた昨今、人間の都合で森を追われた野生動物たちが田畑を荒らしてしまうその被害総額は億単位以上となっていて、駆除後廃棄処分される動物たちの方が多いくらいです。せめておいしく食べてあげるのが僕たち人間にできる罪滅ぼしの一つだと思ってはいますが、ジビエは扱いも難しく、飼育された動物と違って病気や菌を持つ個体もあり、さまざまな注意が必要です。

僕たち料理人の仕事は、他人の口に入るものを作るという大変責任の重い仕事の一つです。プロの料理人が作る料理がおいしいのは当たり前。それよりもおいしいまずいを言える国に生まれたことがどれだけ恵まれているか。料理する食材があることがどれだけ恵まれているか。座っておなかいっぱいになるまで安全な場所で食事をできることがどれだけ恵まれているか。世界はまだまだ貧困や紛争にあえぎ、大人になれない子供もたくさんいます。僕たち大人は、それをどのくらい知っていて、自覚しているでしょうか。

子供たちに少しでも食に興味を持ってもらえたら、という気持ちから始めたこの取り組みが、果たしてどのくらいの社会貢献となるのかは分かりません。また、僕たち料理人ができることは少ないですが、これからを生きる子供たちに残してあげなければならないことと、食を通じて見える世界を伝え続けること。一人の大人として、取り組み続けていきたいと思います。

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